マーク・フォースター監督『ワールド・ウォーZ』『オットーという男』 東京国際映画祭で11年ぶりの来日!「今の時代だからこそ、優しさの意味を考えさせられる作品に」
11月3日(日)ジャパンプレミアイベントオフィシャルレポート
世界的大ヒット作『ワンダー 君は太陽』の、もうひとつの物語『ホワイトバード はじまりのワンダー』が12月6日(金)より全国公開。このたび、現在開催中の第37回東京国際映画祭でのジャパンプレミアに際して、『ワールド・ウォーZ』(12) や『オットーという男』(23)のマーク・フォースター監督と本作でエグゼクティブ・プロデューサーを務めたレネ・ウルフが来日し、本編上映後にQ&Aを行った。
映画の上映後、温かな拍手に包まれた会場内。その様子を目の当たりにしたフォースター監督は、「日本の皆さんはわたしの作品をいつも温かく受け入れてくださいます。ですから本日上映をしていただいてとてもうれしいですし、日本でもこれから上映がはじまりますので。ぜひともお友だちにもお声がけしていただいて、たくさんの方に観ていただきたいと思います」と会場に呼びかける。
続いてウルフも「やはりわたしたち、映画をつくるものとしては、こうやって皆さんが観ていただけるからこそやりがいがある。いつもそう思っています。これから日本でも公開がはじまりますが、これはいろいろな世代の方に観ていただきたい作品なので、ご家族はもちろん、お友だちなど、いろんな世代の方と一緒に、また足を運んでいただけたら」と呼びかけた。
人を思いやる勇気や、大きな愛について描かれた本作。「この映画で伝えたかったメッセージは?」という質問に、「実はこの映画の公開のタイミングについては、ふたりでいろいろと話しをしたんですが、まさに今のこの時期だからこそうまくシンクロできたように思うんです」と切り出したウルフ。実際は2年前に公開しようと準備を進めていたものの、ちょうど時期的にハリウッドの脚本家ストライキと重なってしまい、2年前に公開することはできなかったという。
「その時は残念だなと思っていましたが、逆に2年遅れとなった今の時代だからこそ、優しさの意味を考えさせられるような作品になった。だからいいタイミングだったなと思います」と語るウルフに続けて、フォースター監督も「確かにこの映画は、戦争という時代背景の中で描かれる“優しさ”だったり“愛”の物語なのですが、私たちが映画をつくっていた時は戦争が起きていなかった。でも今はいろいろなところで争いや戦争が起こっています。その中で優しさとはどういうことなのか、人間同士は信じ合わないといけないし、対話があれば問題は解決できるのではないかという希望を持つことなど、こんな時代だからこそ、なおさら物語を通じてそのことを感じてもらいたい」とその思いを語った。
くしくもフォースター監督が本作の原作を読んだのは2020年3月。新型コロナによるロックダウンのために、外出もままならなかった時期。本作の主人公サラが納屋に隠れている状況に自身を重ねていたという。「この物語に共感したのは、自分たちもコロナ禍で外に出られなかったということもあります。私はあまり泣くことはないんですが、サラの気持ちがものすごく理解できて。最後の方は感情移入してしまい本当に泣いてしまいました。過去に泣いたのは(2004年にフォースター監督がジョニー・デップ主演でメガホンをとった)『ネバーランド』以来でした。そこから2人で脚本を考えていかないといけないね、ということでいろいろと考えて。半年後にスタートすることになりました」。
客席からは、アリエラ・グレイザー演じるサラと、オーランド・シュワート演じるジュリアンという若き2人のキャスティングを称賛するコメントも。そのキャスティングについて質問されたフォースター監督は、「実はコロナ禍だったので、はじめてZoomでのオーディションを行ったんです。ただふたりは同じ部屋にいるわけではなく、分割された画面に映っているわけなんですよね。そこでふたりにセリフを読んでもらって。画面上ではふたりの十分な化学反応を感じたし、パーフェクトだと思った。でも実際に現場に来たらどうだろうか、という心配がありました」と正直な思いを吐露。だがフォースター監督がZoomの画面で感じたふたりの化学反応は、実際にプラハでふたりに会った時も期待通りに演技をしてくれたとのことで、「心配することはなかった」という。
当時15歳だったオーランドは現場にスマホを持ち込むことがなかったそうで、「オーランドは15歳の青年ですよ。若い子が現場にスマホを持ち込まないなんてありえないと思ったんですよ。でも彼は集中したいからと言ってそうした。それが彼のスペシャルな部分だと思いました。ふたりともこの物語の時代背景のリサーチをたくさんしてくれて、自分たちなりに作品を理解しようとしてくれました」と満足げ。ウルフも「やはりパンデミック中だったということで、普通なら映画が終わると、友だちに会ったり、どこかに出かけたりということがあると思うんですが、この時はどこにも出かけられなくて。ふたりでいることも多かったので、ふたりの関係性が通じ合っていたんじゃないかなと思います」と振り返った。
会場には主人公たちと同世代の15歳だという女性客から「私たちの世代に向けて言いたいことは?」という質問も。それに対して「いい質問だね」とニッコリ笑ったフォースター監督は、「やはり今の時代の若い皆さんにお話をするならば、この映画の主人公も最初は人に気付いてもらいたくない。人に見てもらいたくないと避けているところがあったんです。あと、やはりこれは社会現象だと思いますけど、いじめもテーマになっています。サラ自身も、ジュリアンの優しさに気付いて、変わっていくというところがありますが、人間は優しさや希望によって変わっていくことができる。そこは皆さんにも感じ取ってもらいたいし、もしも学校でいじめがあった時は、その人を助けるために手を差し伸べていただきたいなと思います」と語った。続けてウルフも「小さいことでもいいから、正しいと思ったことはやるべき。自分が正しいと思ってやることは、それが優しさとなって倍増していく。それが光となり、希望になっていくと思います」と若者に向けたメッセージを送った。
そしてあらためて最後のメッセージを求められたフォースター監督は「今日手を挙げていただいた方、そして質問をしてくださった方に感謝します。やはり映画に息を吹き込むのはお客さまだと思っていますから。そして東京国際映画祭の皆さま、そしてこの映画をプロモーションしてくださる方たちにも感謝しています」とあいさつ。ウルフも「日本の皆さまは本当に優しくて、皆さんのおもてなしの心に感動しました。いつもその気持ちを大事に思っています」と感謝の思いを述べ、会場は大きな拍手に包まれた。
映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』
12月6日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー!